実施主体:美浜町竹林整備事業化協議会、対象里山林:町内竹林約300ha
美浜町では里山や丘陵地の果樹園に竹林が侵入し、この10年ほどで竹林の面積が35haから305haと約10倍にも拡大しました。その多くは放置竹林で、内部は密生し枯れ竹が倒れるなど保水や土壌保全等の本来の森林の機能が低下し、植生も単調になり景観も悪化して問題となっています。この竹林の整備と活用を事業として回していくため、平成22年に地域住民、実践者、研究者の有志が集まり「美浜町竹林整備事業化協議会」が発足しました。同会では、竹資源の利活用により新たな整備資金が生まれてくるような仕組みの構築を目指しており、モデル竹林を設けて竹を林内で炭化し(ポーラス炭)、農地の土壌改良材として活用する取組を主軸に取り組んでいます。竹の活用法は竹細工や竹炭などたくさんありますが、放置竹林の枯れ竹や枝葉部分も含め竹を処理していくには量がはける利用法を推進する必要があること、竹炭を土壌改良剤として利用すれば農地での環境負荷を低減できることから、竹の消し炭を利用した農業を推進し農産物の付加価値化をはかり、農産物販売で得られる利益で竹林整備と消し炭等土壌改良材の生産を行い活用していく循環の仕組みを目指しています。
平成24年度は、竹炭だけでなく竹チップや竹パウダーに加工したものの農業利用と効果についても実践者の話を聞く研修会と、活用可能性の検討を行いました。同協議会の周辺には、住宅除湿材としての竹炭は生産販売したり、竹の割り箸製造に取組はじめた人もいることから、それら多様な取組を行う人たちと協働または材の有償販売を行うことも視野にいれて検討しました。またモデル林でのこれまでの活動成果として、荒廃した竹林整備の作業量及び人件費、コスト、ポーラス炭や竹チップの生産量等を整理し、事業化を検討する基本的な情報を実績から割り出しました。
同協議会では以上をふまえ事業化計画の作成に取り組んでいく予定で、基本的な方向性として以下、同会理事の案を基本に、今後検討を進めていくこととしています。
【「美浜町竹林整備事業化協議会」事業化計画作成の基本的考え方(案)】
1.事業化対象事業
竹林整備から発生する竹材の有効利用を広く視野に入れるが、当面はポーラス炭(竹を野焼きして作る消し炭)および竹チップを農業用土壌改良材として活用することに絞って事業化計画を作成する。竹林整備によって発生する竹材の有償支給を事業対象に含む。
2.事業化によって目指す目標
(1)竹の土壌改良材を活用する“土づくり農業”を定着させ、結果として竹林整備が促進されること。
(2)雇用の創出による地域活性化
3.期待される社会的効果
(1)農薬・化学肥料に極力頼らない“土づくり農業”への転換
(2)高付加価値化による儲かる農業の定着
(3)農地からの環境負荷の低減による伊勢湾再生
(4)生態系の多様化による田園地帯の観光資源化
4.事業化への課題と対応
(1)土づくり農業従事者の確保
・ポーラス炭・竹チップを活用した農業研修
・広報活動の強化
(2)農作物をいかに売りきるか
・エコブランド化戦略の確立
・消費者団体との連携
・グリーンマーケットへの進出
・安定供給対策確立・・・単独でなく、集団で連携対応、収穫の波をなくす
(3)ポーラス炭製造コストと農家への販売価格どのギャップをいかに対処するか