里山林保全活用指針作りのための参考事例集

和牛放牧による緩衝地帯の整備と獣害の防止、牧歌的景観の再生

◆主体名(活動場所)
白王里山再生プロジェクト(NPO法人おうみ木質バイオマス利用研究会、近江八幡市白王町自治会、近江八幡市白王町農事改良組合)(滋賀県近江八幡市)
URL:
・近畿農政局・滋賀県農業技術振興センター資料http://www.maff.go.jp/kinki/seisan/chikusan/sintyakujouhou/pdf/15jirei1.pdf
・NPO法人おうみ木質バイオマス利用研究会 http://www.ombk.info/

◆事例の概要
 イノシシのすみかとなっていた放置された里山林と耕作放棄田の藪払いを行い、間伐材で柵を設け、和牛を放牧。飼育牛の活躍で、林地内、耕作放棄地内の除草が行われ、牧歌的な景観がよみがえった。出産前の牛は放牧で健康になり、また、農家の肥育コストが下がることから農家は歓迎している。

◆取組内容
白王町では、平成3年頃からイノシシによる農作物被害が始まり、年々被害が拡大した。この対策として、農家、自治体、滋賀県立大学、NPO等がそれぞれの対策を講じていたが、原因は放置されていた農地とその周辺の里山林であることが分かった。
 イノシシによる被害をこれ以上拡大させないため、関係者らが集まり、すみかとなっていた里山林と農地のササ刈り、除間伐、作業道整備、伐採木の搬出、チップ化等を行い、明るい里山林の再生を行った。この作業後、耕作放棄田の整備を行い、里山林との間に柵を設け、放牧できる環境を整えた。ここで地元農家の飼育牛を放牧し、牛による除草管理を行った結果、牧歌的な里山景観が再生した。
 この一連の取り組みは、里山づくりセミナーの開催やテレビ報道により話題となり、保全管理を行うボランティアの拡大につながった。平成18年に50aで実施した放牧地は、平成19年度には60aに拡大している。放牧期間は、平成18年度は9~10月、19年度は7~9月に実施されている。放牧地は電気柵で囲い、湧水を活用した水飲み場や、立木を利用した日よけ・雨よけを設ける等、現場ではさまざまな工夫がされている。
放牧期間中の飼料は、濃厚飼料を1日1~2回ドンブリ茶碗に1杯ずつ給餌する他は、放牧地の野草採餌のみで飼育している。

◆実施体制・仕組み
 NPO法人おうみ木質バイオマス利用研究会、近江八幡市白王町自治会、近江八幡市白王町農事改良組合が協力して、放棄された里山を復元しようと「白王里山再生プロジェクト」がスタート。里山林の伐採と間伐、除草作業、畜産農家から牛を借りるなど、多様な主体が連携して整備活動を実施している。

◆成果
 白王里山再生プロジェクトの協働活動は、荒廃地をねぐらとしていたイノシシによる農作物被害の防除、里山林の整備と放牧による景観形成、肥育牛の健康への貢献、肥育コストの削減、環境教育の場の創出等、多面的な価値がある。特に景観形成とイノシシの防除に大きな成果をあげている。


プロジェクトの現地説明看板

実行体制と関係団体の役割

*図表:平成19年度田園自然再生活動コンクール応募資料、滋賀県農業技術振興センター資料より