里山林保全活用指針作りのための参考事例集

林地残材の搬出のしくみ

◆実施主体(活動場所)
 NPO法人土佐の森・救援隊(高知県)
 URL:NPO法人土佐の森・救援隊  http://mori100s.exblog.jp/

◆事例の概要
NPO法人土佐の森・救援隊は、「自分の山は自分で管理する」を基本に、技術研修による人材育成や森林整備作業等に取り組んできた。独自の地域通貨券「モリ(森)券」の発行と、木質エネルギー利用実証実験の取組を通じて、小規模自伐林家による林地残材等の搬出を促進、地域産業の振興、地場産品の消費にも貢献している。

◆取組内容
高知県内では、下層植生が減少した放置林や再植林を伴わない皆伐後の山で土砂災害が頻発している。県内では小規模林家が多いことから、小規模林業を支援・推進する仕組みをつくり森林整備を推進しようと、平成15年にNPO法人土佐の森・救援隊が設立された。
同法人は、「自分の山は自分で管理する」を基本に、森林を所有する自伐林家、林業に関心はあるが森林を所有しない他伐林家、都市部の森林ボランティア等をネットワークする団体で、人づくり・組織づくり・ネットワーク構築を通じて、小規模林業の再生による森林環境の再生と山村活性化を目指し、課題解決型の活動を展開している。
 チェーンソー1本でも副業として林業に関わる「森業」を提唱。「土佐の森方式軽架線キット(ワイヤーとウインチで木材を林道まで運び出す機具)」は、20万円(ウインチ別)と安価で、初心者でも扱いやすく、3~7人で1日に5立法メートル程度の木材の搬出が可能である。
 このような簡易な機材を活用して自伐林家や森林NPOによる間伐・搬出を促進するため、技術研修を行うとともに、独自の「森林証券制度」を創設し地域通貨券「モリ(森)券」を発行。森林整備活動に参加した人は、モリ券を受け取り地場産品と交換できるシステムづくりを行った。このシステムを活用し、平成17年度からは高知県仁淀川町の木質エネルギー利用実証実験(NEDO「仁淀川流域エネルギー自給システムの構築」事業)に参画。「C材で晩酌を!」を合言葉に、小規模自伐林家等による林地残材等の搬出運搬作業に取り組んでいる。

◆実施体制・仕組み
「モリ(森)券」とは、「森林を整備保全するための活動に参加(実践活動、資金提供)したことを証する券、略して森券=モリ券=地場産品との交換券」で、NPO法人土佐の森・救援隊が企画・提唱する森林ボランティア活動に参加すると配布される。モリ券を発行するのは森林ボランティア団体等で、団体に寄せられる協賛金や自治体のファンド等が原資となっている。
木質エネルギー利用実証実験事業では、自伐林家が主に軽トラックで林地残材等を搬出。仁淀川町のバイオマス発電施設(現在停止中)では、これをトン当たり3,000円で購入。3,000円相当の「モリ(森)券」をプラスするという仕組みを構築し、収集運搬量を当初予想よりも飛躍的に拡大させた。

◆成果
 C材や林地残材等を中心とした材の搬出量・搬出者は、いずれも増加している。自伐林家による搬出者は、当初(平成18年頃)は数名だったものが平成22年には約80名にまで増え、材の集積量は月400~500トンほどになっている。また、林業の専業化や集約化が進む中、少額でも日銭が得られる仕組みがあることから、副業やアルバイト等の位置づけで森林整備に参加する人々が増え、小規模林業の再生や都市との交流、地域経済の活性化につながっている。なお、この取組は、「C材で晩酌を!」というキャッチフレーズとともに、他地域の活動へも波及している。


軽トラで材を搬出する林家

「モリ(森)券」

搬出者、搬出量ともに増えている

搬出者内訳では小規模林家の増加が著しい

*写真・図表:農山漁村活性化優良事例集(平成22度版)、 平成19年度環境省里なび研修会in高知ほか講演資料、NPO法人土佐の森・救援隊ホームページより