実施主体:芦津の山活用研究会(芦津財産区)、対象里山林:芦津財産区有林1174ha
智頭町芦津財産区有林の森林はほとんどが水土保全林で、6割が天然林、4割が人工林、うち95%がスギです。智頭町は伝統的な林業地であり、芦津はその中でも中核的な存在でしたが、近年は林業離れが進み、芦津でも山に入る人が減少しています。そこで、地域資源を活用し住民自らが地域での暮らしや生業を構築することで、本来の自治とコミュニティの再生を図るため、「智頭百業学校」と連携し、試行的に「トチの森づくりとトチの実の活用」と「里山林からの集積活用」に取り組みます。「智頭百業学校」は、地域資源を活用して月に数万円程度の収入になる小さくとも多様な半業を創出し智頭での暮らしをつくるための人材の確保・養成のプラットフォームで、町全体で取り組みが進んでいます。
(1)トチの森づくりとトチの活用
トチの実は、トチ餅の材料として芦津では伝統的に利用されてきました。通常トチは、数十年たたなければ結実せず、優良な種子が実るのは樹齢100年以上の樹といわれますが、母樹の穂木を二年目のトチの苗木(台木)に接ぎ木することで、12~13年程度で種子が結実します。この技術を持つ兵庫県の森の名人百合國夫氏と、トチの森林生態の研究者である琉球大学谷口真吾教授を招き、芦津地区で勉強会を開催、芦津でも取り組むことになりました。平成24年度、百合氏のトチ園を視察、その技術を目の当たりにし、秋にはトチの森づくりに向けたタネ拾いと播種、原生林の踏査を行いました。種蒔きは智頭小学校と連携。地域の資源を子どもたちに有用な形で引き継ぐため、小学校の総合学習プロジェクトの一環として、共に取組むことになりました。
今後は、智頭小学校と連携しつトチの森づくりやトチ餅づくり等加工技術の継承、原生林のトチ巨木を訪れるツアーの企画等、トチを活用した新たな「半業」の創出と地元の子どもたちへの継承を目指し、取組を推進していきます。またトチの生育適地はスギと似ていることから、2年前から町内で行っている「木の宿場プロジェクト」の活動実績を活かして、耕作放棄地の棚田等に植林した里に近い細いスギを伐採・搬出し、種子生産を目的としたトチの森づくりを推進していきたいとしています。
(2)里山林からの集積・活用(木の宿場プロジェクトの展開)
智頭では、集落周辺の里山林はスギ林です。林業離れが進み間伐が遅れているスギ林の手入れを、半業の1つとしての自伐林業の推進やトチの森づくりの動きと連動を視野に推進していきます。方法は2つ、自伐林家による搬出を促進する木の宿場プロジェクトと財産区有林の財産区による自主管理です。
木の宿場プロジェクトは未利用材を集積し地域通貨「スギ小判」と交換し、町内商店の活性化と地域内の経済循環を生みだす仕組みで、財源の一部には、森林ボランティアからの寄付の材「志~材」を活用するなど、多様な主体と連携した取組を推進しています。また担い手育成と山での半業創出の一環として智頭百業学校と連携し、芦津地区が指導役となって林業塾を開始しました。財産区有林の自主管理では、林業経験のない若手にも声をかけ、人材育成を兼ねて有償で山の整備を行っています。
以上によりスギの里山林整備の取り組みとトチの森づくりをつなげ、里山林を地域住民の生業を創出する場として活用できるよう、活動を推進していきます。