里山林保全活用指針作りのための参考事例集

消費者のニーズに応じた工房の運営

◆主体名(活動場所)
きまま工房 木楽里(きらり)(埼玉県飯能市)
URL:きまま工房 木楽里 http://www.k-kirari.co.jp/

◆事例の概要
埼玉県飯能市にある「きまま工房 木楽里」は、消費者に木の良さを伝えるために平成9年につくられた工房である。工房で製作した木工品を売るだけではなく、購入者自らがそれぞれのニーズに合わせた木工品をデザインし、製作できるようサポートしている。当時、このようなスタイルの木工所は全国でもほとんど例がなく、その先駆的事例といえる。木工品の種類は、身の回りの小物から机、椅子、本棚に至るまで多岐にわたり、週末は家族連れで楽しむ人も多い。

◆取組内容
埼玉県飯能市は、江戸時代から良質な「西川材」を産出する地域として知られてきた。ここで林業を営む井上淳治氏は、奈良県桜井市の製材工場での製材見習いを経て、昭和59年から家業の林業を継いだ(10代目)。林業を続ける上で大切なことは、一般の消費者に木の良さをPRすることだと考え、平成9年から工房の経営に着手する。当初は、自らが製作した木工品の販売を手がけようと考えたが、大量に生産される安価な木工品が出回る中、木工品の製造販売だけでは経営が成り立たないと考え、木工品製作を希望する人に材料と製作の場を提供する体験型工房としてオープンした。木工品の材料は、自らの山から伐り出したスギやヒノキの無垢材であり、それを倉庫にストックし、自由に選べるようにしている。現在、工房には、木工製作のアドバイスを行うスタッフが本人を含め3名おり、予算やデザイン、材料選びや作り方などをアドバイスするとともに、製作の際の技術サポートを行っている。
なお、同工房では、森林見学ツアーや林業体験、出張木工教室などの企画も行っており、木の良さや森の大切さを積極的にアピールしている。
 
◆実施体制・仕組み
木工品製作は、時間あたり800円~1,500円(会員割引制度あり。道具の持ち込みの有無によっても料金が異なる)で、その他、材料費や保険代を製作者が負担する形になっている。道具は、プロ仕様のものも含めて、すべて無料で貸し出している。(大型機械は除く)また、機械加工に自信がない場合は、別料金で工房のスタッフに加工を依頼し、組み立てだけを自分で行うこともできる。製作にかかる日数は、簡単なものならば1日、大型の家具の場合でも2日~4日程度で完成させることができるという。

◆成果
 林業経営に工房の経営をプラスさせることにより、木材生産の現場と消費者を直接つなぐことに成功している。未経験者が初めて木工に取り組む場合、身の回りの小物しか作ることができないだろうと思われがちだが、ここでは専門スタッフのサポートにより、未経験者でも大型家具(本棚やキャビネットなどの収納家具、子供用の学習机など)を作ることができる。
質の良い無垢材を利用できることと合わせて、専門スタッフの技術サポートにより、質の高い木工品の製作ができることが同工房の人気の理由であり、子供の成長などに応じて必要な家具をひとつずつ手作りするリピーターも増えている。
なお、代表の井上氏は、全国林業研究グループ連絡協議会副会長、埼玉県森林協会副会長、NPO法人西川・森の市場代表理事を務めており、木の家づくりに関する情報発信や大工、工務店、設計士などのネットワークづくりにも取り組んでいる。


木楽里の工房

材料も西川材の中から自分で選ぶことができる

本格的な家具づくりに挑戦できるのが魅力

家族連れも増えている

デザインも製作もオリジナルが可能

*写真:「きまま工房 木楽里」ホームページより