里山林保全活用指針作りのための参考事例集

未利用資源“葉っぱ”の商品化

◆主体名(活動場所)
株式会社いろどり、上勝町、JA東とくしま上勝支所 ほか(徳島県上勝町)
URL:株式会社いろどり http://www.irodori.co.jp/

◆事例の概要
上勝町では、未利用資源である「木の葉」を、料理の「つまもの」として販売、多品種を商品化し、地域のお年寄り1人1人が収入をあげている。現在、上勝町から出荷される「つまもの」の全国シェアは約8割を占め、年間売り上げ約2億6千万円に上るビジネスとして大きな注目を集めている。

◆取組内容
上勝町は、人口1,949名871世帯(平成22年12月現在)、高齢者比率が49.4%という、過疎高齢化がすすむ山村である。昭和56年2月、局地的な寒波により、主要農産品である温州みかんのほとんどが枯死。農業が大打撃を受けたことをきっかけに、新たな商品化を模索。高級料亭の盛り付けに里山の枝葉が珍重されていることに着目し、町の半数近くを占めるお年寄りに可能な事業として、昭和61年から商品化に取り組む。
 “葉っぱビジネス” は、付加価値が高く、軽量で作業が容易なことから、地域の女性やお年寄りが取り組める。現在、約200人で、南天、もみじ、柿の葉、いちょう、松葉など320種類ほどの“つまもの”を商品化し、「彩(いろどり)」というブランドで出荷している。
市場動向の把握と自律的な供給調整を行い、少量多品種の商品を的確に流通させるため、上勝町では、平成4年から役場の防災無線ファックスにより、参加者に販売情報を一斉送信、平成11年からは、高齢者でも容易に使えるパソコンを導入。出荷ケースのバーコード管理等の情報ネットワーク構築を行っている。参加者は、常に、株式会社いろどりが提供する販売動向予測、過去の出荷数量、参加者の出荷実績、月ごとの売上金額累計を順位付きで見ることができる。

◆実施体制・仕組み
同町では、同事業の推進のため、第三セクター株式会社いろどりを平成11年に設立。同社は、情報ネットワークシステムの運用や受注管理、情報発信等を行っている。市場から入った注文は、同社がとりまとめ、全参加者に一斉に情報提供を行っている。個々の参加者はファックスやパソコンでリクエストを確認すると、早い者勝ちで受注。収穫した“つまもの”を、JA東とくしま上勝支所に納品。JAからは専用トラック「彩号」と航空便で、京阪神や首都圏の市場に出荷・販売する。
 当事業が成功した背景には、横石知二氏(現・株式会社いろどり代表取締役)が“つまもの”の商品としての価値に気付くと共に、その大きさや美しさ、季節感の演出方法等の商品知識やノウハウを習得し、参加者と協働しながら商品開発に努めるとともに、市場の需要に迅速に応えるべく情報ネットワークを構築、供給体制を確立したことにある。横石氏いわく「人は誰でも主役になれる」という自律的な生産体制を、ITを駆使しながら構築し、全町で取り組む大きなビジネスにまで育てあげたことが、当事例の特筆すべき点である。

◆成果
 需要がすぐに伝達され、各人の売り上げ実績が常時可視的に確認できることにより、特に高齢者や女性のやる気や自信、生きがいの創出にもつながっている。同町では“つまもの”の出荷のみで年収1,000万円を超える世帯もあり、事業の成功により同町へのUターンやIターン希望者も増加傾向にある。


上勝町の景観

お年寄りが主役になれる“つまもの”産業

JAからの出荷作業

商品「赤南天」(左)と「青もみじ」(右)

*写真:株式会社いろどり ホームページより