里山林保全活用指針作りのための参考事例集

里山整備の民間資金創出

◆主体名(活動場所)
 西条・山と水の環境機構(広島県東広島市)
 URL:西条・山と水の環境機構 http://www.kamon.ne.jp/~yamamizu/

◆事例の概要
 東広島市西条地域では、酒造協会関係者を中心に、市民、行政、高校・大学、企業関係者らが連携・協働し、里山林の整備と地場産業の活性化を推進する仕組みを構築している。酒造協会会員の造り酒屋が酒1升の売り上げにつき1円を拠出して基金をつくり、それをもとに、水源となる里山林の整備、そこで出る木質資源の活用(堆肥化し酒米用水田に施肥、炭にして水質浄化等)、流域の里山林整備活動団体への報奨、環境教育、森林整備と水質に関する調査研究等を実施。里山林と地場産業を軸に、資源と経済の循環を生みだしている。

◆取組内容
 中国地方の山は標高が低く、多くが人間が管理・利用してきた里山林である。東広島市西条地域では、里山林を水源とする良質で豊富な地下水に恵まれ、酒づくりが地場産業として育まれてきた(造り酒屋が9蔵ある)。しかし近年、里山林や農地の荒廃が進んでいることから、西条酒造組合が環境をテーマにした地域貢献活動を検討、地場産業の源となる里山林を保全活用する事業を行う計画をたて、平成13年西条・山と水の機構を発足、以下のような事業を行っている。
(1)山と水のグラウンドワーク(山づくり・水づくり・美しいふるさとづくり)
 西条の水源の山となっている龍王山・憩いの森を拠点に、荒廃した里山林の下刈り・除伐等を実施。緑の少年団から、高校生・大学生、企業まで様々な団体が参加し、50人~300人程が集まって定期的に整備活動を行っている。整備の際には、地元の経験者や学識者の講義・指導もあり、参加者各位が活動の意義を理解し、それぞれの力量にあわせて活動できるようにしている。搬出した材はその場でウッドチップにし、堆肥化して酒米用水田に施肥する、炭にするなどして活用している。
(2)環境学習
教育委員会と連携し、地域の小学生を対象とした源流域探訪、きき水体験などの環境学習を実施し、子どもたちに、西条の湧水やそれを涵養する里山林の大切さを伝えている。
(3)報奨事業
流域の環境を整備する活動団体を対象に、平成18年より報奨事業を実施、毎年3団体程度に報奨金と盾を授与し地域の活動を支援・促進している。
(4)調査研究活動の支援、助成
大学等研究機関による里山の整備後の植生と整備手法調査、水質等の調査研究を支援している。

◆実施体制・仕組み
 ファンドとして「西条・山と水の基金」を設立、西条協会組合の加盟会社が酒の売り上げ1升あたり1円を拠出、年間およそ600万円を集め活動原資としている。この基金を活用する事業推進組織「西条・山と水の環境機構」は、理事会・運営委員会・事務局からなり、取り組みへの参加主体代表者らで構成されている。参加主体は、西条酒造協会、賀茂地方森林組合、東広島酒米推進協議会、JA広島中央、広島県、東広島市、企業・団体(中国電力、シャープ、キヤノンなど)、広島大学、近畿大学、県立西条農業高校、東広島緑の少年団、黒瀬川流域の環境活動団体等で、企業、事業団体、行政、大学、活動団体が含まれ、産・官・学・民連携の意思決定機関と実行部隊を有している。

◆成果
 安定的な財源をもとに里山林の整備を進めており、「山のグラウンドワーク事業」では、平成12年11月開始以降平成22年12月現在で、回数:48回、参加人数:延べ5,995人、作業面積:延べ約16haを整備した。単に整備するたけでなく、得られる資源を水質浄化や酒米づくりに活用し基金の元となる酒づくりと結びつけることで、資源と経済の循環を生みだしている。地場産業からのファンド設立、明確なミッションと分かりやすい地域貢献効果、事業者を中心に学術機関・公的機関とも連携した安定的な運営組織により、多数の参加者・賛同者を得て持続しうる体制ができている。


地場産業からの基金の仕組み

里山林資源の活用と循環の仕組み
里山林の整備 ウッドチップによる堆肥づくり

*図表:H21年度環境省里なび研修会in広島 資料より
*写真:西条・山と水の環境機構ホームページ活動報告資料より