里山林保全活用指針作りのための参考事例集

森林の癒しの効果を事業化

◆主体名(活動場所)
信濃町癒しの森事業推進委員会、信濃町森林療法研究会「ひとときの会」、信濃町役場ほか(長野県信濃町)
URL :信州信濃町癒しの森  http://www.town.shinanomachi.nagano.jp/iyasinomori/

◆事例の概要
 信濃町では森林の癒し効果に着目した「森林セラピー」に町ぐるみで取り組んでおり、平成17年に森林セラピー基地の認定を受けた。約250haの森林内に「癒しの森コース」が設定され、町長に認定されたトレーナーが来訪者に対し森林療法のプログラムを実施している。企業の福利厚生や社員研修等を通じて、都市と山村の交流につながり、経済効果をもたらしている。

◆取組内容
 信濃町では、森林の管理放棄や集落の過疎化・高齢化といった「農山村が抱える課題」を解決し、かつ、健康に対するニーズの高まりや、田舎暮らしや農山村交流の意向の高まりといった「都市部の要請」に応えることを目的として「癒しの森事業」を開始し、平成17年森林セラピー基地の認定を受け、約250haの森林内に「癒しの森コース」を設定した。
 最も重点的に取り組んでいるのは人材育成であり、町独自の養成講座および町長による認定制度が設けられている。「森林メディカルトレーナー」は約140名が認定されており、訪問者に同行して整備された里山林内をガイドしながら、“癒し効果”を最大限に引き出す森林療法のプログラムを行っている。宿泊施設のオーナーにも認定制度が設けられており、宿泊者に癒しの時間を提供する技術を有する宿(「癒しの森の宿」)として認定された35 軒の宿が、地元野菜を使った食事の提供やアロマ体験を提供している。
 さらに、保養効果増進を図るために、医療機関とも連携し、主に滞在中・滞在後の安全管理等を行っている。

◆実施体制・仕組み
 住民グループが働きかけ、町役場とともに官民協働体制で事業を開始した。事業推進にあたって、町内の農林水産業、商工業、観光業関係者、医療関係者、学識経験者等による「癒しの森事業推進委員会」を発足、月1回程度の会議を開いている。事業導入後に役場内に「癒しの森係」を設置し、総合窓口(顧客の窓口業務)、各種コーディネート、推進委員会との調整、地元医療機関との連携といった役割を担っている。「信濃町森林療法研究会-ひとときの会-」は「森林メディカルトレーナー」と「癒しの森の宿」オーナーによって構成され、プログラムの開発・提供を行っている。

◆成果
 企業や健康保険組合を対象としたモニターツアーを頻繁に開催するなど、都市部の潜在ニーズに対する積極的な働きかけにより、企業の福利厚生や社員研修の場としても利用が進んでいる。町内の7割を占める整備された森林・里山林と、癒しを求める都市住民とがリンクし、訪問者の増加につながっている。スキーリゾート・高原保養地としてのノウハウを持った宿泊施設の活用による経済効果、ペンションオーナー等の各種体験学習の実績があるトレーナーの活躍機会の増進、さらに、豊富な高原野菜等の農産物の販売促進といった地域経済効果につながっている。
 トレーナーや癒しの宿オーナーは、認定後も「ひとときの会」メンバーとして、来訪者に質の高いガイド及びサービスを目指し、宿でのおもてなしや料理に関する研究等のプログラム開発を行っており、この働きがプログラムの質の保持に重要な役割を果たしている。
 森林セラピー基地として特筆すべき特徴は、①トレーナーや癒しの宿オーナーの人材育成、②体力別に選択可能なコース設定や宿泊施設等の環境整備があり、これらが個人客だけではなく企業・学校等の団体客の利用増加につながっている。

森の中での呼吸法 森の中での水療法

*写真:山村再生支援センター 教育・健康事業資料より