実践地域
川場村(群馬県川場村)

2013年1月9日

川場村(群馬県川場村)の実践地域概要

実施主体:川場村、対象里山林:村内民有林 2,989ha

 川場村は、「農業プラス観光」を村づくりのテーマに掲げて取り組んできた長年の実績を活かし、村づくりのテーマに新たに「森林」を加え、自主自立の村づくりを推進しています。村面積の約8割を占める森林を活用し、エネルギー自給率の向上や獣害対策といった課題解決と、森林・里山を活かした地場産業の育成等を目指し、2つの取組について指針を策定しました。

(1)里山林整備による環境学習と観光資源づくり(試行:門前地区)
 川場村全体の観光拠点は村中心部の道の駅田園プラザとその周辺ですが、村内各地区の里山や特徴を活かした取組を推進し、観光資源の多様化による各地区の活性化と村全体としての観光価値の向上を目指しています。その一環として門前地区で里山散策路づくりに取り組みました。
 川場村門前地区は、同村西側からの入口に位置し、観光名所の1つである吉祥寺には年間約7万人が訪れます。この地の利を活かし地区の活性化に活かそうと、「門前町づくり構想委員会」が中心となり吉祥寺の寺山を中心とした散策路づくりに取り組みました。この里山は、かつては門前地区住民に身近で子どもたちの遊び場にもなっていましたが、利用低下に伴い藪化していました。まちづくり構想委員会ではここを再生し活用する計画をたて、平成21年度までに間伐と林道整備など初期整備を実施しており、サクラなど花木植栽による「花の山」にすることを予定していました。
 平成22年度、本事業の一環で現地調査を行い、片山雅男教授(夙川学院短期大学教授、本事業委員)の助言により、数度にわたる勉強会と現地調査、検討会議を経て、住民自身が地域の資源に改めて気付き、自生種・在来種を活かした里山散策路づくりへと方針を転換しました。同時に林内で見られる植物や昔からある祠やお堂など文化的資源も掘り起こし、散策路の見所を整理しました。住民会議を経てこの里山を吉祥寺の由緒にちなみ「青龍の森」と名付け、自生種・在来種や地域の文化を活かした里山づくりと地区の活性化を展開していくこととしました。
 平成23年度から平成24年度にかけて、片山委員を講師に、自生種や在来植生を活かす管理方針について学ぶとともに、都市部大学との協働により散策コースの検討を行いました。外部者のまなざしを活用することで、集落内を含む地域資源を確認し、「青龍の森コース」「水と森を感じるコース」「歴史と人ふれあいコース」「癒しの田園コース」の里山林と門前集落を舞台とした4つの散策コースを企画、その後プロのイラストレーターの協力を得て、山と集落が一体となった門前ガイドマップを作成しました。
 今後は、このイラストマップを活用した地元住民によるガイドシステムの検討、整備作業の継続的な実施体制の確立、住民が運営する農産物直売所等とも連携した活性化を目指し、川場村の「ふるさと」の良さを活かした体験交流の場の1つとしていきます。

(2)地域材活用推進計画の検討
 川場村は村面積の約8割を森林が占めており、昭和30~40年代に植林したスギ・ヒノキが伐期を迎えています。村内には利根沼田森林組合の事務所があり、木工工房を併設し若者を雇用するなど森林施業と森林資源の活用に積極的に取り組んでいますが、村内には製材所がありません。同時に家具・建具等の製作技術の継承も難しい状況になっています。広葉樹林については一部を除き藪化して獣害の温床となっているのが実情です。このような状況にある森林を整備し、得られる資源を製材とともにエネルギー源や地場産業の振興に役立て「自主自立の村づくり」を推進することを目指しています。
 その具体策として村内で産する木材のストックヤード、製材加工施設、未利用材のチップ化等を含む「森林んコンビナート」(木材集積加工基地)を村内に整備することにより、素材生産から未利用材の活用まで、木材の多段階総合利用ができる体制の構築と人材の養成等、川場産材のブランド化を推進する計画を進めています。
 平成22年度は、基本的な方向性について検討し村内施設への木質バイオマスボイラーの導入可能性調査等の検討を行いました。また身近なところで木質エネルギーの活用を推進するため、薪利用促進の一環として薪割機のレンタル制度を開始しました。
 平成23年度から24年度にかけて、森林コンビナートに関する検討を進める中で、この構想を実現するため川場村、東京農業大学、清水建設株式会社と連携協力して進めることとし平成24年2月24日に包括連携協定を締結、産官学の連携により川場村で「グリーンバリュープログラム」を実施することになりました。これは、森林などの地域資源を活用した新しい事業モデルを構築することにより、持続的発展が可能な“元気なふるさと”の実現を目指すもので、具体的には、(1)間伐等によるCO2クレジットの創出、(2)間伐材を木材製品に加工・販売することによる地場産業の創出、(3)未用木質資源のエネルギー利用(発電及び廃熱利用)を内容としています。この産官学連携協定を軸として川場村では、森林・里山林を活用した産業創出、林業再生、環境保全、エネルギーの地産地消などの実現を目指します。
 今後、森林コンビナートの詳細設計、集材量と利用・発電等のフィジビリティスタディを行うとともに事業運用体制・施設運営体制等について検討し、グリーンバリュープログラムの実現にむけて取組を進めていく予定です。