実践地域
春蘭の里実行委員会(石川県能登町)

2013年1月9日

春蘭の里実行委員会(石川県能登町)の実践地域概要

実施主体:春蘭の里実行委員会、対象里山林:石川県能登町宮地地区内の私有林 32ha


 「春蘭の里」は能登山間地の特徴を活かした山田川流域の複数集落にまたがる農家民宿郡です。過疎高齢化が進み地域の将来が憂慮される中、家の跡継ぎや若者が戻ってこられる地場産業をつくろうと、平成8年、農家の有志7人が実行委員会をつくり取組が始まりました。現在12集落に約30軒が開業。地場産の素材に徹底的にこだわった農家民宿の運営とグリーンツーリズムに取り組み、修学旅行などの団体から個人客まで、年間約3500人~5000人を迎えています。海に囲まれた能登半島の中でも山間地であることの特徴を活かすため、重要なのが天然のきのこです。食材としてだけでなく、きのこ狩りなど体験活動の場としても重要です。そこで、長年放置されていた数十年放置されていた32haの里山林を天然きのこが豊富に収穫できる「きのこ山」とすべく整備に着手しました。長年放置された里山をきのこが増える山に再生するため、専門家と協力し管理方針を明確化するとともに、保全整備作業を、企業のCSR活動や学生の環境学習の実習等外部者と協働で推進することを柱に、指針を策定しました。

(1)きのこ調査、きのこ山づくり
 平成22年度から、専門家の協力を得てきのこ調査を開始しました。対象里山林内に調査エリアを10箇所設け、地掻き等の整備ときのこ発生の相関性を検証しました。専門家の指導のもと春蘭の里実行委員会のメンバーが2日に1度の頻度で山に入り発生したきのこを記録し、そのデータを専門家が分析するという連携で調査を進めた結果、膨大なデータを集めることができました。調査結果では、2~3年目には整備した箇所で食用きのこが増える傾向が現れてきたものの、相関性の結論を出すには長期的なモニタリングが必要であることから、春蘭の里実行委員会では今後もきのこピークの10月中下旬を目処に、調査を継続することとしています。調査は人材育成ときのこ文化継承のため、研修を兼ねて実施していきます。民宿経営農家に呼びかけ、きのこの同定のポイントや発生環境を学び、整備作業でも共同作業日を設けています。また調査結果をもとに「春蘭の里きのこ図鑑」とまとめ、周辺で見られる地元の呼称、正式名称、発生時期、発生環境/植生、見分け方、毒茸との判別注意点、食べ方などを整理し民宿経営農家に配布しました。

(2)グリーンツーリズムと連動した里山林整備活用の推進
 きのこ山づくりの最大の課題は、整備作業の継続であることから、春蘭の里では企業のCSR活動や学生の環境学習、県の森林ボランティア事業等との連携、宿泊客の体験活動として料金を割引にするなど、外部との連携協働により整備の一助としています。平成22年度は、各民宿農家の所有里山林や農地をフィールドとして実施可能なプログラムの調査・提案を行いました。平成23年度からは大学、専門学校、企業CSR活動、県のツアー事業等からの協力が得られ、外部協力者のべ150名程度との協働作業を行いました。

 今後は、引き続き年に一度のきのこ調査や整備作業を行い、食用きのこが発生しやすい環境づくりの方法を検証し知見を集積していきます。それを通じて共同のきのこ山整備だけでなく各農家所有の里山林における管理推進ときのこ文化の継承を図ります。また里山林の多面的機能や、里山整備が社会貢献や環境学習の一環になることを分かりやすく伝える工夫を検討し、グリーンツーリズム事業と連動する形での整備と活用を一層推進していきます。