実施主体:秦野市 対象里山林:市内里山エリア約1130ha
秦野市は、丹沢山地南麓に位置する神奈川県内唯一の盆地地形をなし、周囲の山々が水源を涵養し豊かな地下水を湛えています。かつてはタバコ葉栽培が主要産業であり、広葉樹の落ち葉を苗床に、薪を葉の乾燥用に使っていたため、里山林は不可欠な農用林として管理利用されていました。しかし、昭和59年タバコ葉栽培が終了すると畑作地帯では都市化が進み人工が急増、同時に里山林の利用は減少、次第に藪化して獣害やヤマビル被害などが増加し、景観も悪化し近づきにくい場となっていきました。そこで秦野市では、里山再生のため標高およそ300m以下の森林約1130haを「里山エリア」とし、保全再生策を開始、特に平成16年度からは地元農家を含む住民・市民と協力して保全再生に取り組んできました。平成19年には行政と関係諸団体の連携組織が発足し、以降、協働の里山づくりは一定の成果をあげてきました。これらの成果を踏まえ、次の段階として、里山林資源の活用と経済化、団体が自立的に活動できる体制づくりが課題となっていました。そこで以下を柱として平成23年度に指針素案を策定しました。
(1)はだの里山コリドー計画の策定 (2)薪自給システムの構築
(1)はだの里山コリドー計画の策定
盆地地形をなす秦野市では市街地を囲むように里山が位置しており、市民による里地里山保全活動が30以上の拠点で行われています。ここでいう「里山コリドー」とは「保全再生された里地里山を地域資源として活用するために、市内の各地の里山を林道、農道、畦道等で結び付け、里山を核として、人々の交流、市民活動、地域の物産等のさまざまな要素を結び付けるという包括的な概念」(秦野市)です。各活動団体の拠点では、様々なふれあい活動や体験活動が可能であることから、団体の横の連携を強化するとともに、拠点となる里山フィールドを繋ぐことにより、里地里山の多様な資源を活かしたまちづくりと地域産業の活性化と地域力向上を目指します。 平成23年度は、コリドーベースマップの作成と活動団体の受入れ可能活動の調査を行い、平成24年度、試行的にコリドーモデルツアーを、農業体験型1件(通年での棚田稲作体験)、里山ハイキング型2件(自然観察、団体の活動紹介、収穫体験や食文化体験の組みあわせ)実施しました。今後はツアーを増やすとともに、継続的に実施できるようプログラム、受け入れ体制等の実施体制を整えていく予定です。
(2)薪自給システムの構築
秦野市では、CO2排出削減の観点から木質資源のエネルギー利用の一環として薪ストーブの導入と薪の利用を推進しています。そこで各活動団体が産する材を薪ストーブユーザーに販売する仕組みをつくることにより、里山資源と経済の循環システムの構築、里山整備活動の活性化と参加者の拡大、エネルギー自給率の向上をめざします。
平成23年度は、初期の基礎調査(需要調査、市場調査、供給可能量の調査等)と講演会を実施。平成24年度は販売体制の確立に向けて試行的な販売を行いました。5団体で合計16m3+40束の実績がありました。
今後は試行販売の関係者と意見交換し、生産販売体制の構築、需要の創出等を進めます。
以上により里山林資源の活用と経済化の取り組みを進め、市民共有の財産として里山を市民の暮らしの中に再生するための取り組みを進めていく予定です。