実践地域
真庭市(岡山県真庭市)

2013年3月7日

真庭市実践地域概要

実施主体:真庭市 真庭の森プロジェクトチーム、対象里山林:市内民有林58,115ha

 真庭市は十数年前から木質バイオマスの調査研究と事業化に取り組んでいるバイオマス活用の先進地です。しかし対象はスギ・ヒノキ林が中心で広葉樹林については手つかずの状態であり、放置林が増え鳥獣害の温床となり、生物多様性など公益的機能も低下しつつあります。そこで広葉樹林の整備と活用を推進するため、以下の取組を行っています。

(1)国内クレジット制度を活用した市民・企業協働による森づくり
 従来の木質バイオマス活用の取組を活かして未利用材を集積し市庁舎空調用の木質バイオマスボイラーに利用して国内クレジットを創出、その売却益を森づくりに還元する仕組みを構築しています。クレジット購入企業と「未来につなぐ真庭の森づくり協定」を締結することで、森づくり活動も協働で実施しています。協定を締結したのは株式会社トンボと真庭観光連盟。活動の主な対象地は真庭市北部、「津黒いきもののふれあいの里」に隣接する市有林です。平成23年度は、生物多様性保全に配慮した整備方針の検討、下刈りなどの初期整備、企業との協働活動を進めるための具体的な活動プログラムの検討を実施。平成24年度は「トンボの森プロジェクト」として実践に入りました。活動には企業の社員と家族、真庭観光連盟主催バイオマスツアーの参加市民が参加。第3回の間伐体験では、間伐した木材をバイオマス集積基地へ運び、地域通貨券をもらって直売所で買い物をするプログラムで、資源と経済の循環の流れを体験しました。また継続的な活動推進のため、活動に関わる企業・市民・行政で「真庭・トンボの里づくり協議会」を設立し、活動資金源となるクレジット売却益等の受け皿として「トンボの森基金」を設立しました。
 今後は、①トンボの里プロジェクトの充実(資金の確保、参加者の拡大、活動内容の充実)、②新たな活動として森と暮らしの関わりを再生する取組(薪ストーブユーザーによる薪づくり事業、森のようちえん等)③:資金の確保(木質燃料利用の促進とクレジット売却益の増加、参加協賛企業等の増加)をすすめ、森を活かした交流と活性化、資源と経済の循環を推進していきます。

(2)里山林林床の薬草等を活用した産品開発
 真庭市は中国山地南麓に位置し、なだらかな山地・丘陵に恵まれています。森林の4割が広葉樹林ですが、利用低下に伴い放置里山林が増加、藪化して鳥獣害の温床となっています。一方、市内9箇所の直売所の年間売上げは5億円にのぼり直売所間の流通体制も整えているものの、冬期間に品薄になることや真庭らしい産品が不足している等の課題がありました。そこで、里山林床に見られる野草・薬草・山菜等を掘り起こし採集・加工し直売所等で販売する取組を促進することで、里山林の整備、直売所の活性化、農林家の副収入などにつなげようと、「里山宝探しゼミナール」を開始しました。富原地区の富原婦人林業研究クラブを先行モデルとし、崇城大学薬学部の村上光太郎教授を講師に、平成23年度から平成24年度にかけて5回の講座と商品開発「クズは宝だ!プロジェクト」を実施しました。
 全5回の里山宝探しゼミナールでは、①講義を通して薬草の魅力を知る②料理研究(加工方法を知り、食べることの関心を高める(アザミ、タラノキ、スベリヒユを使ったレシピ開発))③地元の里山で宝探し(身近な植物の中に食べて健康になる植物を発掘、周辺の里山で30種類の利用できる植物を確認し今後の展開方法などを協議)を行い、この成果を活かして商品開発に取組みました。商品開発ワークショップでの議論を通じ、「山の資源を活かしながら山を守りたい」との思いのもと、葛の新芽、桑、ヒノキ、あすなろ、クマザサを使った『くず新芽ブレンド茶』の開発がスタート。各素材を集め、刻み、乾燥し、炒り、幾通りものブレンドを試飲して商品を作り上げました。また商品開発コンセプトの整理、イメージキャラクターとパッケージ案の考案を行い、平成24年度秋に試行販売し完売しました。
 今後は、このお茶を増産し作業量や面積などの検証を行って、継続できる体制づくりを検討します。また新たな商品開発にも取り組みます。真庭市では、富原婦人林業研究クラブの自立を推進しつつ、関心のある地域に取組を広げていく予定です。

 以上の取組を通じ、森を活かした交流と活性化、資源と経済が循環する仕組みをつくり、地域資源を活かした持続可能な循環型地域社会の形成を推進していく予定です。